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「落ち着けっての。誰も行かないなんて言ってないだろ」
とりあえずクールダウンさせないと1人で特攻しかけない。
ぐっと言葉に詰まり、大きく吐き出す息には自省やら羞恥やら感情が入り乱れていた。
「……すんません、調子乗りました」
すぐに出る謝罪の言葉。もう少し反発するものとばかり思っていた。
「俺、さっきの戦いで思い知らされました。自分一人じゃなんも出来ない。まだそんな力は俺には無いんだって」
視線を落とした折坂。その目には諦めではなく、自らを責める不甲斐無さと悔しさだけが見て取れる。
折坂は真っ直ぐに俺を見た。そこには無力を認め、奮い立たせる強さがあった。
「だから、力貸してもらえるとありがてぇです」
崩れたかけた付け焼き刃の敬語。だからこそ、手を借りたいと願う思いが偽りではないと直感する。
「初めからそうするつもりだよ。だからあんまり焦るな」
「……うす」
乗りかかった船だし、七瀬と先生の依頼もまだ打ち切られたわけじゃない。見捨てる選択肢をとったらそれこそ次からの飯が不味くなる。
俺が同行するのは決まった。しかし、鏡は首を振る。
「いい感じのトコ悪いけど、あたしはパスだ」
「用事でもあるのか?」
「そう思ってくれて構わねぇ。今回だってナワバリ荒らされたからついて来たんだな。これ以上付き合う義理はないね」
当然のように突き放し、冷めた言葉を投げ掛ける。
それは俺が持っている鏡という少女の印象に合致している。そう言われても何ら不思議はない。
だけど何故だろう。ただ漠然と鏡は協力してくれるものだと思っていた。
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