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「残念ですけど、仕方ないですね」
個人的な戦いと割り切っているのか無理強いはしなかった。内心では少し寂しがってるのかもしれない。
向けられた笑顔にそっぽを向き、鏡は俺に注文をつける。
「この馬鹿上手くコントロールしろよ。いざって時は手抜かないで本気でやれ」
最後の部分だけやけに強調されていた。どうにも引っかかりを覚える。
「言われなくても本気でやるよ」
「はっ、どうだかねぇ」
腕を組んだまま半目で覗き込こまれる。
何が言いたいんだこいつは。俺が今まで手を抜いたところなんて見せてないだろ。
これ以上反発しても3倍くらいで返されそうなので、話す相手を渦月に変える。
「お前はどうする?」
「僕も行くだろうけど、同行は出来ない。本部への報告と引き継ぎがあるからネ。現場検証も含めて、まぁ正午には間に合うだろう」
「そうか。そっちは任せるわ」
本部との関わりを持ちたくないので口出しはしない。面倒事は大人しく引き渡す。
「とりあえず、一時的に解散しよう。凍迅狼はともかく、組織外の2人がここにいると説明が厄介だ」
現場を受け持つ渦月が言うならば従うしかない。異論は無くそれぞれが頷く。
「じゃあ、行くか折坂」
「おっす。姐さんもここまでありがとうございました」
勢いよく頭を下げるその姿は舎弟と呼ぶに相応しい。
「別にお前の為じゃねーよ。報酬はあとでしっかりもらうからな」
ニヤリと口端を上げると、渦月は分かってますよと無言で肩をすくめた。
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