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「うん、知れば知るほど奥が深いなぁ。これは私1人じゃどうにもならないわけだ」
「まぁ、最重要機密事項だからな。簡単に見つかるようなもんじゃないよ」
宿り身を口外することは大罪に値する。だからこそ、宿り身が世間に露見せずに済んでいる。
規則を破ればどんな罰則が待ってるか検討もつかない。
「間違っても他の誰かに教えたりするなよ」
「おお……、禁断の領域に踏み入っている感が凄い」
「ほんとに分かってんのかな……」
目を輝かせる水原に俺は後悔の念がちらついた。
水原に宿り身の存在を打ち明けたのは他でもない俺だ。
水原の熱意、本気さを知った。終いには口論にまで発展した。だからこそ応えてあげたくなったわけだけど……。
「冗談だって。ここだけの秘密すると固く誓います」
祈りを捧げるように両手を絡ませる水原。
まぁ、約束を破るようなやつじゃないだろう。……ノリが軽いのが気にはなるが。
水原は鞄をガサゴソ漁り、ノートとシャープペンを取り出す。
「じゃあ、さっそくメモを……」
「こら。記録に残るのはダメだ。頭の片隅にでも記憶してくれ」
「あ、そっか。残念だなぁ」
口を尖らせて書き写していた手を止める。
ホワイトボードの文字を消してしまおうとイレーザーに手を伸ばす。
運命の悪戯というやつは、どうしてこう見計らったかのようなタイミングで訪れるのか。
出入り口から軽いノックが2回聞こえてきた。
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