プロローグ

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 ♢♢♢  「こっちだ!隊列を乱すな!急げ!」  無骨な声が狭い非常用通路内で反響し、周囲の空気を震わせた。  地下からは爆発音が響き渡り、絶え間なく振動が伝わって来る。建物全体が揺らぐと全ての電光灯が一斉に消えた。  非常灯の頼りない灯の中を6つの影が組織的に動いていた。  威圧的な漆黒の防護服を身に纏い、それぞれが連射式の長形銃を携えている。分厚いブーツが金網の床を必要以上に鳴らし立てた。  暗視ゴーグルの奥を覗く事が出来たなら、彼らが日本人ではないと知る事が出来ただろう。西洋系の顔立ちに冷徹な双眼が周囲の警戒を怠らない。  日本の新首都『中央都』。旧首都圏の一部を含め数十年前新設された国の要。  現在地は中央都南東部の工業化学開発地帯。国家繁栄の為に各地に埋め立てが進められ、領土は日々拡大されている。  この地域では医療の新薬開発や電子技術の研究所が至る所に点在している。  今いる建物もその中の1つ。表向きには生物に関する研究所となっている。  もちろん研究内容に偽りは無いが、地下は設計段階では計画されていなかった。一部の人間しか知り得ない隠匿された空間だ。
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