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一際大きな衝撃音に先導する隊長がハンドシグナルで一同の足を止めた。
辺りを見渡し、安全を確認した新入りが不安げに声をかける。
「地下では一体何が行われているのでしょうか」
「さぁな。俺には検討もつかねぇよ」
殺した人の数は両手に収まらず、もはや覚えてすらいない。
社会の裏側の人間である事を自覚し、その世界を何年も生き抜いて来た隊長にも分からないものがある。
「ただ、一つ言えることは奴が化物って事だ」
「化物、ですか?」
ありふれた一般的な言葉に具体的なイメージが湧いてこない。暗殺のスペシャリストか何かだろうか。
「あぁ、俺は一度だけ奴を見た事がある」
5年前に見た、まるで戦争地にでも立たされたかのような凄惨な光景。
今と同じ無数の爆発と衝撃波。自分は物影に隠れる事しか出来なかった。
現実離れした記憶の中で彼は信じ難いものを目にした。
荒れ狂う戦場にただ住む人影は特別な武器を持たず、ほとんど丸腰だったのだ。
その時隊長は確信した。
自分にも知り得ない、さらに奥底に隔絶された世界があると言う事を。
(まぁ、奴が出たってことはこの任務もほとんど終わりだな)
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