僕の友達は姉の死体

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 僕の子供の頃の唯一の友達は、姉の死体だった。  死んでいるからもう姉ではないし、きょうだいにありがちな上下関係――弟というのは、往々にして姉の奴隷と化すものである――からも解放されていた。  姉は、僕が中学一年生の夏休みに死んだ。  その死体が、なぜ僕の家に残されていたのかは分からない。姉が死んだ翌週、僕が家に帰ると、死んだはずの姉が僕の部屋のベッドの下にいた。  僕と姉は相部屋だったので、姉がいたって別におかしくないのだが、死体となれば話は別だ。  そもそも、確かに火葬場で、姉の体が焼かれたのを覚えているのに。  僕はどうしていいか分からず、姉の死体をそのまま放置していた。  両親は二人とも、僕が姉の死体を見つける前日に事故で他界してしまっている。  それから僕はすぐに、叔父の家に引き取られた。  叔父は「お姉ちゃんは辛かったな。お前はもう大丈夫だぞ」と泣いていた。  姉の死体は、こっそりと叔父の家に運び込んだ。  叔父は未婚だったので、男二人と死体との生活が始まった。
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