サロメの殺人

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 久々に家に帰ってお母さんから聞いた時は倒れそうになった。あの汚らしい男が自分の父親になるなんて、嬉しくとも何ともない。昔された性行為を思い出して吐きそうだった。それでも、大人の面したコイビトの横で嬉しそうに話すお母さんを見てしまうと、何も言えなかった。自分の中で何かが崩れ去るのを黙って見ているしかなかった。  その日から完全に家に帰らないで、性行為をしてお金を稼いでいた。お母さんからは定期的に心配の電話や、帰ってくるよう説得のメールが来たがすべて無視した。  二人で仲良くやっていればいい、あたしは会いたくないし、穢れたやつと親子になるのは無理だと、完全に思い込んでいた。お母さんもあたしを説得するより、いないものとして扱えばいいのにと何度も思った。  そう思い込むことで自分のやっていることにますます罪悪感を持たなくなったし、何より、月がそれを肯定してくれていた。あたしの選択は間違っていないと。あたしは正しいと肯定してくれていた。  肯定してくれたのはお月様以外にもいたが、所詮自分の存在を消してなかったことにする以外に何も役に立たなかったが。そうして、あたしは、ようやく自由を得た。そこから後は、好きでも無い汚らしい男や、金持ちを落として性行為のみで稼いで暮らしていた。
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