咲き遅れた薔薇の吐息

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3密という言葉に苦笑する   いつの頃からか酒はやめた 仕事のない時間と休日は   一人で過ごすことが安らぎ 黙々と自然の奥へ入り込む   山に登り蝶と戯れ深呼吸 乾いた自我を清流に浸し   紺碧の空の光を照り返す 絵具箱のどの色も愛おしく   決して混ぜ合わせたくない 筆先にすくい上げた一色を   真っ白なキャンバスに置く 古く色褪せた楽譜をめくり   静かにピアノの鍵盤をたたく 誰かに聞かせるためじゃない   僕自身の胸に音を落とし込む 物語も自分自身の記録だと   初めは 思っていたから 『裏路地~』は 自分の心の淀を   掻き出すための大掃除だった
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