49人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
episode.2 傷ついた訪問者
雨は深夜からずっと降っていた。
しかし見通しが悪かったわけではない。運転手の体内に残るアルコールが、その感覚と判断を鈍らせていた。
何かに当たったように思った。
ヘッドライトに一瞬照らされたその何かはおそらく人だ。軽い衝撃と、衝突音はたしかに聞いた。しかし、車自体が止まってしまったり、スピードが緩んだりするほどではない。
振り向く。
街灯の下、何かが横たわっているようにも見えるが、水溜まりに反射する光のようにも見える。このまま行ってしまっても大丈夫じゃないか、停まって確認して、へたに対応したら自分の飲酒が発覚してしまう、運転手はアルコールで鈍る思考力をどうにか起動させ、そこまでを考えた次の瞬間、目の前にコンクリート製の太い電柱が迫っていた。激しい衝撃を感じたか否かの後、意識を失った。
最初のコメントを投稿しよう!