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しばらく経った後のことだった。
「ほら、もうだいぶ明るくなってきた」
浅生さんの言う通り、あれだけ黒々としていた空の至る所に、雲の切れ間が生まれていた。
幸いなことに、最初遠くから聞こえた雷は僕たちのすぐ近くまで来ることはなく、今ではその不穏な気配は全くない。
すっかり小降りになった雨も、きっとこのまま止んでくれるだろう。
確かに浅生さんの言う通り、ほんの数十分程度の夕立だった。
ほっと息をついた所で、「…晴哉」といきなり浅生さんに下の名前を呼ばれた。僕はその安堵の吐息を爆速でひっと吸い戻したくなった。
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