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「晴哉の『はる』って、漢字だとお天気の晴れだよね」
「え、ああ、うん」
浅生さんのペースと僕のペース、どちらが標準速度なのかたまに分からなくなる。けれど名前について指摘された時点で、次に来る言葉は何となく見当がついた。
「じゃあ晴れ男だ」
案の定だった。
「ああ…それたまに言われるけど、全然だよ。名前はただの名前だし、だって現に降られちゃったし」
「もう、すぐそうやって卑屈になる」
呆れた口調で言いながらも、それが本気の呆れではないことが伝わってくる。
浅生さんは、面白がっていた。変に自惚れているわけでも何でもない。そこだけは強調させてほしい。
僕と一緒に今日という日を過ごしているせいで何度も不運な巻き添えを食らっているにも拘らず、浅生さんは一ミリも機嫌を損ねていない。あまりにも器が広すぎやしないだろうか。
夕立に遭ってもなお、どこか楽しげなのは不思議で仕方なかった。
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