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   そう、今日の僕は、浅生さんと待ち合わせた所からずっと謝り続けている。そして叩きつけるような勢いのこの土砂降りに、とどめを刺されたような気持ちだった。遠くの空からは雷の音も聞こえてくる。もう、勘弁してくれ。  公園内のところどころに立っている電灯が、音もなく灯る。  本来ならまだまだ明るい時間のはずだけれど、この土砂降りのせいで辺りはすっかり薄暗くなっていた。  隣に立つ浅生さんの顔が、電灯のおかげで少しくっきりした。カバンの中からタオル地のハンカチを取り出した浅生さんは、濡れてしまった腕をそれで拭いた。  今日の浅生さんは、珍しくワンピースだった。袖のない、淡いブルーのワンピース。  大学の学部が同じで、同じ講義を取っていて、それで親しくなった浅生さんだけれど、今日の浅生さんはなんだか全然知らない浅生さんのような気もして、そんなことを考え始めると途端に気持ちが落ち着かなくなって、剥き出しのその白くてほっそりした腕からすっと目を逸らした。
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