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ふふふ、と笑いながら、それまで座っていたベンチから腰を上げた浅生さんは、大きな屋根の下から一歩出て、天を見上げた。
「ほら、もう止んでる」
両の手のひらを胸の高さで上に向けた結果、そこに雨粒は落ちてこなかったらしい。
元々の明るさをすっかり取り戻した空は、浅生さんが着ているワンピースの色とよく似ていた。
ふくらはぎ辺りで軽やかに揺れるその青い裾を見ながら、「あの、浅生さん、虹女っていうのは…」と改めて疑問を投げた。
「こっち来て」
僕の問いはスルーされてしまったのだろうか。けれど今日一日浅生さんに対して申し訳なさでいっぱいの僕に、何かをとやかく言う資格はない。
ひょいひょいと浅生さんに手招きされた僕は、それに静かに応じてベンチから立ち上がった。
「見える?」
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