✳︎✳︎✳︎

5/11

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 そう言いながら浅生さんが指差した先。そこには薄っすらと、けれど大きな七色の光が弧を描いていた。  虹だ、と僕は思わず息を飲んだ。虹を見たのなんて、一体いつぶりだろう。  僕は「あっ」と随分間の抜けた声を漏らして、そしてその後しばらくは黙り込んでしまった。  雨上がりが生んだ偶然に、隣に浅生さんがいることも忘れて、ぼんやりと見惚(みと)れた。 「こんな風にね、雨がざっと降った後で一気に晴れた時、私、よく虹を見るの」  浅生さんが、おそらく虹女の種明かしを始めた。  ぼうっとしていた僕は我に返り、視線を浅生さんの横顔へと移した。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加