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そう言いながら浅生さんが指差した先。そこには薄っすらと、けれど大きな七色の光が弧を描いていた。
虹だ、と僕は思わず息を飲んだ。虹を見たのなんて、一体いつぶりだろう。
僕は「あっ」と随分間の抜けた声を漏らして、そしてその後しばらくは黙り込んでしまった。
雨上がりが生んだ偶然に、隣に浅生さんがいることも忘れて、ぼんやりと見惚れた。
「こんな風にね、雨がざっと降った後で一気に晴れた時、私、よく虹を見るの」
浅生さんが、おそらく虹女の種明かしを始めた。
ぼうっとしていた僕は我に返り、視線を浅生さんの横顔へと移した。
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