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「だから、虹ってそんなに珍しいものじゃないと思ってたの。中学生くらいまで。でも、実際は違うでしょ?」
「…うん、珍しいものだとは思う」
その証拠に、しばらく言葉を発することを忘れてしまった僕がここにいる。
子どもの頃も、今も、そしてきっと大人になってからも、虹を見ることができたら同じように圧倒されるのだと思う。
単に綺麗だから、それだけが理由じゃなくて、見たい時に見れるものではない、希少さがそこにはあるからだ。
「私は友達と、それから家族に言われて気付いたの。琴美と一緒にいる時によく虹を見るような気がするって。だから、じゃあ私って虹女なのかなって」
まあ、たまたまなだけかもしれないけどね、と浅生さんは肩を竦めながら付け足した。
けれど僕は、違う、そうじゃない、そんな風に付け足しなんかしなくていい、何故だかそう言いたくなった。
私は虹女なんだと、堂々と言う浅生さんでいてほしかった。
最初その言葉を聞いた時には戸惑ったくせに。自分でも、矛盾しているとは思う。
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