✳︎✳︎✳︎

6/11

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「だから、虹ってそんなに珍しいものじゃないと思ってたの。中学生くらいまで。でも、実際は違うでしょ?」 「…うん、珍しいものだとは思う」  その証拠に、しばらく言葉を発することを忘れてしまった僕がここにいる。  子どもの頃も、今も、そしてきっと大人になってからも、虹を見ることができたら同じように圧倒されるのだと思う。  単に綺麗だから、それだけが理由じゃなくて、見たい時に見れるものではない、希少さがそこにはあるからだ。 「私は友達と、それから家族に言われて気付いたの。琴美と一緒にいる時によく虹を見るような気がするって。だから、じゃあ私って虹女なのかなって」  まあ、たまたまなだけかもしれないけどね、と浅生さんは肩を(すく)めながら付け足した。  けれど僕は、違う、そうじゃない、そんな風に付け足しなんかしなくていい、何故だかそう言いたくなった。  私は虹女なんだと、堂々と言う浅生さんでいてほしかった。  最初その言葉を聞いた時には戸惑ったくせに。自分でも、矛盾しているとは思う。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加