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「確かに色々ハプニングはあったのかもしれないけど、私は今日で良かったよ。雨は好きじゃないよ、でもね、降り始めた時、チャンスだって思った」
「だからあんなに、雨なのに晴れ晴れとした顔してたんだね」
「そういうこと」
魔法のような七色を見つめながら、浅生さんは虹女の種明かしを終えた。
そして、単に虹という不思議な自然現象に対してだけじゃなくて、僕自身も魔法にかけられたような気持ちだった。それとも、解かれたと言ったほうが正しいのだろうか。
あれだけずっしりと沈んでいた心が、軽くなっていたからだ。
僕も、今日という日を浅生さんと過ごせてよかったと思った。
しばらくしたら消えてしまうであろうその大きな虹を、目に焼きつけるように僕はいつまでも見続けた。
会話がふつりと途絶えても、居心地の悪さは全くない。
同じ景色を、浅生さんと並んで見ている。
それだけで、僕は十分に満たされた。
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