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続けて浅生さんが何か言った気がしたけれど、とにかく雨の音が大きすぎて上手く聞き取れなかった。
全く、今日という日は、浅生さんとの最低限のコミュニケーションまで僕から奪おうというのか。
「もう、そんな今にも泣きそうな顔しないでよ。トラブル続きだから?」
泣きたいと心の中では確かに思っていたけれど、表情にもそれが出てしまっていたことに思わず頭を抱えたくなる。「そりゃ落ち込むでしょ…」と、僕はもうありのままの気持ちで答えた。
何をどう取り繕っても、きっと今日はもう駄目だ。
「少なくとも私は楽しいけどな」
その浅生さんの口振りは、確かにいつも通りだった。今日一日で愛想を尽かされていないことに、とりあえず僕はほっとする。
けれど、楽しい、はやっぱりあまりにもうなだれている僕に対するフォローだと思う。浅生さんは、僕なんかと仲良くしてくれる親切な人だから。
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