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「圭樹、お待た──」
せ、が言えなかったのは、圭樹が誰かと話していたから。
「ダメ、かなぁ?」
可愛く身をよじりながらのセリフなのに、圭樹の目は彼女を素通りして、苺にニコリと笑いかけた。
「苺、彼女にね、僕のとこでお茶を習いたいって相談されてね」
その態度に少しだけムッとしながらも、彼女は続けた。
「ほら、いま日本文化って見直されてるし、同級生がお茶の教室やってるなんて、何かの縁じゃない?」
そう続ける同級生に苺は「いんじゃない?」と軽く答えた。
「あれの何が楽しいのか分かんないけど。正座しなきゃダメだし、作法とか覚えるのメンドいし、お茶はマズイし」
そんな苺の感想に圭樹はクスクス笑いながら、「苺は嫌いだもんね」と話す。
「そりゃ五十鈴川さんにはお茶の良さなんて、ねえ?」
彼女が同意を求めたのは圭樹に対して。けれど圭樹は冷ややかな目で彼女を見下ろした。
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