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「いいの? 話の途中だったよね?」
「ん? 終わったよ?」
「そうなん?」
「そうなの」
ちらりと彼女を振り返るが、彼女は足早に立ち去るから苺も納得してあるき始める。
「あ」
そして、何かを思い出して苺は声を上げた。
「なに?」
「お茶は面倒だけど、茶菓子は美味しいって教えてあげるの忘れた」
「あぁ、そう言えば今日の茶菓子は、源氏吉兆のきんつばって言ってたね」
その単語に苺の耳がピクンと動く。
「吉兆? きんつば?」
「うん」
「余ってない? 余分ある!?」
「どうかなぁ。うちに来る? 無くても昨日お弟子さんが持ってきた阿闍梨餅があるよ?」
「行くー!」
元気よく右手を上げる苺に、圭樹もニコリと、笑う。
「って、あれ? なんか他のこと話してなかったっけ?」
どうにも会話の着地点にしっくりと来ず、立ち止まる苺。
「話してないし、早く帰らないと暗くなるよ」
けれど、圭樹にそう言われて「だね」と、引っかかった何かは、そのまま忘れることにした。
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