大人なケーキ

5/8
前へ
/186ページ
次へ
 きんつばをパクリと口に入れれば、彼女の顔は一気に緩む。 「うー、美味しい!」  これ以上ないほどの笑顔に、圭樹もニコニコしながらそれを眺める。 「本当に苺は甘いものが好きだよね」 「きんつばは神です」  きりっとした顔も一瞬、圭樹の手からきんつばを与えられれば、パクリと口を開けてニンマリ笑う。 「うふっ、苺ちゃんってば本当に美味しそう♪」  そう言いながらお茶をコトリと置いたのは、圭樹の母親、支倉充希だ。さらには圭樹の師匠でもあり、裏千家の流れを汲んだ伊織流のお家元でもあるが、今は見る限り普通の主婦にしか見えないだろう。 「そうだ、苺ちゃん、空也の最中食べたい?」  そんな質問に、苺の頭の中は最中一色に染まった。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加