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「五十鈴川、数学の補講、逃げるなよ?」
「そ、そんなぁ……」
数学の授業はテスト返しから始まった。そして、赤点は補講決定で、今回は苺だけ。
「すげぇ、支倉、満点かよ」
桐谷の言葉に、圭樹はニコリと笑う。
「ちょうど復習してたところが出たから」
「……お前、前回のテストもそう言って満点だったよな?」
「そうだっけ?」
天は二物を与えず、というが与えるところには惜しみなく与えるらしい。それを悟った桐谷は机に伏せて打ちひしがれる苺を見た。
「ってかさ、同じ環境で育ったくせに、五十鈴川はなんであーなんだろうな?」
そう言って笑う桐谷に圭樹は「でも」と反論した。
「苺は小学校2年まで、自分がクラスで一番偉いと思ってたんだよね」
「は? なんで?」
その、当時はまだ今より勉強が出来たのだろうか? 桐谷の素朴な質問に圭樹は「あのね」と説明を始めた。
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