あの子と、サイコロキャラメルと

1/10
前へ
/10ページ
次へ
口の中に広がる甘さを感じる度に、僕はあの頃を思い出す。あの頃僕達は少年で、いつだって無邪気に毎日を過ごしていた。仲間と過ごす毎日はとても楽しく、大人になっても関係は変わらないと信じていた。あの子に出会うまでは…。 あの子に初めて出会った時、友達が増えたと僕は喜んだ。最初にあの子に気付いたのはガンテツだった。おい、誰か俺達を見てるぞというガンテツの視線の先を見ると、確かにあの子は居た。メンコで遊んでいる僕達を、仲間に入りたそうに少し遠くからジッと見詰めていた。誰も見た事がない子だった。遠くから引っ越してきた子なのかもしれない。僕達はあの子の下に駆け寄り、話し掛けた。 どこから来たの?とタケシが聞くと遠くから来たと答え、名前は?と僕が聞くとーーと答えた。変な名前だなとガンテツが笑いながら言い、仲間に入るか?と聞くとあの子は頷いた。あの子はメンコを持ってなかったので、僕達は何枚かあの子にあげて、みんなでメンコ遊びをした。 それからはずっとあの子と一緒だった。 メンコ、けん玉、ケンケンパ、沢山の遊びをあの子とした。あの子はいつも僕達が遊んでいた寺に居て、放課後、学校から寺に直行すると鐘の下で片手を上げて僕達を迎え入れてくれた。大好きな友達だった。でも、誰も彼の事を知らなかった。ーーって子を知ってる?と周りに聞いても、みんな首を傾げるばかりだった。誰それ?この辺りにそんな名前の子は居ないよ?と言われ、親からはよく知らない子と遊ぶのは止めなさいと怒られた。でも僕達はあの子と遊ぶ事を止めなかった。 鬼ごっこ、かくれんぼ、縄跳びと、それからも僕達はあの子と遊び続けて、そして疲れていった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加