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一方、僕とガンテツは変わらずにあの子と遊び続けていた。タケシの事は、仲違いをして縁を切ったとしか言えなかった。本当の事なんて言える訳がない。
そっか、残念だね。と言うあの子に、僕達は君の下から離れないからね。と返事をした。
僕はこの時、大人になって3人で酒を飲む、そんな夢を見ていたんだ。
嬉しい、ありがとう。そう微笑むあの子に、僕達も笑かけた。
3人になってしまった僕達だけど、日々の楽しさは変わらなかった。謎の疲れにも慣れてきたのか、時々以前と同じ様に身体を動かして遊んだりもした。夏休みに入り、虫取りや木登り、川遊び等をしているうちに季節は進み、あの子と出会った夏が過ぎようとしていた。
そんな中、ガンテツが少しずつおかしくなっていった。遊んでいる時に、急に自分の首を掻きむしったり、意識を失って倒れたりするのだ。あの子はその度に青ざめて、ごめんなさいを連呼する。すると何事もなかったかの様に、ガンテツは正気を取り戻すのだった。
その様子に、僕は怖くなった。でも今更あの子を裏切りたくない。あの子は良い子、あの子は良い子!僕は自分に言い聞かせた。
夏休み最終日、僕達は海水浴に来ていた。
ガンテツの親が夏休みの思い出にと連れてきてくれたのだ。2人共、気を付けて泳いでねという呼び掛けに、僕は返事をしつつやっぱりあの子は見えてないんだな…と思った。
軽く準備運動をし、海に飛び込むと冷たい海水が心地良かった。あの子は泳ぎが得意なのか、どんどん沖へ向かって泳いでいき、ガンテツが負けるかー!と言いながらそれについていった。僕はこのままガンテツが戻って来ない気がして、怖くなった。止めて、戻って来てくれガンテツ。ところがそれは僕の杞憂に終わった。暫くすると、2人共砂浜に戻って来て、どちらが早く浜に戻ってきたかと言い合いをしていた。僕はホッとしたと同時に自分を恥じた。馬鹿か僕は。あの子は人を殺す様な霊じゃない…多分。
その後も何事もなく楽しい時間が流れ、スイカ割をしたり、砂遊びをしたり、お昼には海を眺めながらおにぎりを食べたりして過ごした。
ん。そう呟きあの子は僕にいつものサイコロキャラメルを手渡す。食べ慣れてきてもう最初の頃の感動は無くなっていたが、今も大好きな味だった。口の中に、いつもの甘みが広がる。ホッとする味だ。
帰る前にもう一泳ぎしてきますとガンテツの両親に伝え、僕達3人は再び海に飛び込んだ。あの岩まで競争しようぜ!と指を指し、急に泳ぎ出すガンテツ。負けないよ!とあの子。僕も頑張って泳ぐものの、なかなか2人には追い付かない。速すぎるよあの2人。
あっという間に姿が見えなくなり、僕は2人の名前を叫びながら泳いでゆく。
ーー君!!ガンテツ!!待ってよ!!
その時、僕は再び嫌な予感に襲われた。何故か急に悪寒を感じたのだ。さっきあの子はそんな霊じゃないと思ったばかりなのに。
やっと岩まで辿り着いた時、僕は衝撃的な光景を見た。ガンテツが助けを求めながら溺れていた。
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