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あの子は一切助けようとしていなかった。
ーー君!!見てないで助けようよ!ーー君!!
あの子はニタニタと笑ってるだけで、何もしようとしない。僕はその様子に恐怖を感じた。
もういい!僕が助けを連れてくる!
僕がそう叫び、浜に向かって泳ぎだしたとたん、ガンテツ君は僕の本当の友達になってくれると言ってくれたよ。君は?と問いかけられた。僕は無視して浜まで泳ぎ、助けを求めた。
おじさん、おばさん!ガンテツが溺れちゃった!!助けて!!
…ガンテツは、助からなかった。
僕の叫びを聞いて、浜に居た大人の人達が全員動いてくれたけど、浮き輪を持っておじさんと僕が戻った時にはガンテツは心配停止状態だった。おばさんは電話ボックスを探して救急車を呼び、居合わせた周りの大人達はガンテツに心臓マッサージをしてくれたり、浜に医者は居ないかと呼び掛けたりしてくれた。
あの子は、居なくなっていた。
ーー君、ーー君。僕はこっそりあの子を呼び掛けた。返事がない。無視してないでガンテツを返してくれよ。僕は懇願した。
やがて救急車が到着し、ガンテツは運ばれて行った。僕とおじさん達も救急車に乗り、回復を心から願った。
お医者さんや看護婦さん達が頑張ってくれたけど、ガンテツは2度と目を開けてくれなかった。
お通夜の日は沢山の人が泣いていた。
ガンテツは良い奴だったから、慕っていた人が沢山いた。沢山の人が焼香の為に、ガンテツ家に出入りしていた。
ガンちゃん、ガンちゃん…と啜り泣くおばさんの姿が痛ましかった。僕は何度も謝罪した。助けられなくてごめんなさいと謝罪した。おばさんは首を横に振り、君のせいじゃないよと僕に無理矢理作った笑顔を見せた。余計に痛ましい姿にさせてしまったと思った。
その時、お通夜の手伝いをしていた自分の母親に呼ばれ、チョロチョロしてないであんたはいい加減帰ってなさいと言われた。うん。と返事をし、ガンテツの祭壇に手を合わせ、おじさん達に挨拶をしてガンテツの家を出た。生温い風が吹き、君もこっちに来るかい?と聞こえた。
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