四分音符と雨

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四分音符と雨

 馬鹿。  自分を罵った。天気予報はいつも嘘をつく。自分が傘を持っていない日に限って、だけど。雨は滝のように降っている。傘を持っていても濡れずに帰るのが難しいだろう。  はぁ、とため息をひとつ。少しだけ待ってみよう。自分に言い聞かせてから放課後の教室へと戻ってみる。当たり前だが一人もいない教室はなんだか寂しかった。  遠くの方では心地よい低音が響き渡っている。どうやら軽音楽部が練習をしているようだ。自分とは無縁である部活に青春を捧げている人達を見ると少しだけイラつく。  あのキラキラした瞳。今ならなんでも出来ると錯覚しているようなくすみひとつ無い眩しい笑顔。自分だって出来ることならそんな青春を送りたかった。だが、送っていない。正確には送れない、のだが。  ズンズンズンズンとベースと思われる、指で弦を弾く音が一定のリズムを刻みながら時が流れていく。それに共鳴していくように空も一定のリズムを保ちながら雨を降らしている。  雨が汚れを落としていくように、自分の心も浄化されるような気がしていた。そして、この気持ちも洗い流されていった。
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