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この話は実際にあった話を元に書いています。興味本位で樹海には近づかない事をお勧めします。
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樹海は霊場が多く、自殺が絶えない場所として噂が絶えません。実際に樹海の側を通ると独特の暗さを感じます。明るい森を知っている方なら、その違いに悪寒を感じることでしょう。
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若いカップルが二組。四名の男女はダブルデートの帰りに樹海近くの道路を走っていた。運転席に座った男性が遊び疲れたのか、彼女にガムを催促する。自然と彼女は彼の口にガムを放り込んだ。傍から見れば和やかな普通のドライブに見える。
樹海沿いの通りを中ほどまで来ると、後部座席に座った女性が声を上げる。
「ここで降ろして!!!」
運転手は声の大きさに驚き一瞬瞼が大きく開いた。後部座席の女性は、しつこく降ろして降ろしてと叫び続けている。運転手はトイレかなと思い車を路肩に停めた。すると直ぐに後部座席の女性は森の方に向って歩き出す。そして、小声で「行かなきゃ行かなきゃ」と呟き始めた。さすがにいつもと様子が違うことに気づいた彼氏が彼女を追う。彼女は止まる様子がなく、助手席にいた女性も森の方へ向かった。
何とか二人で彼女を引っ張って車まで戻す。彼女は車に戻るとうずくまり、黙り込んでしまった。どこか調子が悪いのだろうと、運転手は帰路を急ぐことにした。車が発進する。
連れてきてる…。そう思ったのは助手席に座った女性だった。彼女は霊感体質だったが、誰も信じてくれないだろうし、怖がらせるわけには行かないと思い黙っていることにした。後部座席にいる「何か」が悪さをしない限り…
樹海沿いの道でカーブの多い道に差し掛かっても、車のスピードが落ちる気配がない。
「ねぇ。ちょっとスピード出し過ぎじゃない?」
彼女の問いかけに運転手である彼は答えない。
「ねぇ。ブレーキ踏んで!」
彼の様子がおかしい。チラリとステンレス製のタンブラーを見ると、後部座席に座る「何か」がニヤニヤしているのを感じた。彼女の背中から汗が吹き出る。
咄嗟に彼女は塩を探し始めた。
(塩!塩!塩!)
車中に塩などあるはずもなかった。車のスピードが上がる。
「ねえ!ブレーキ!!!」
彼女の声は運転手に届いていないようだった。彼女の呼吸が荒くなり、手も何故か震える。
(塩!塩!塩!!!!)
キキキッとタイヤが鳴りながらカーブの道を走っていく。
焦った彼女はどうでもよくなり、手元にあったものを後部座席に投げた。
すると不思議と「何か」が消える。同時に運転手がブレーキを踏んだ。車の速度が落ちる。彼女は自分の荒い呼吸だけが車内に響くような感覚だった。
「よかった」
彼女がそう呟き後部座席を確認すると「何か」は完全にいなくなっていた。胸をなでおろすと、自分が投げたものが目に入る。
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ポテトチップス
その光景に後部座席の二人は何してるのと笑った。
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