始まりの唄

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始まりの唄

 そこに闇があったのは覚えてる…。  なにもない死の世界…。時の流れすらなく、ただそこにポンッと存在しているだけだった。  光が世界に降り注いだ…。それは神話の始まりだった。那由多に広がる生命…その中の大きなカケラは、いつしか神や悪魔と呼ばれ、生命を賭けた戦いを始めた。長い長い戦いだった。  終わらないその物語…それを止めたのは、ヒトだった。  世界から神が消え、悪魔も消えた。なにもないその世界で、ヒトの命は紡がれていった。  ただ…終わりはどれも同じだった…。メロディーは呆気なく止まり、生命は死に絶えた。それで全て終わりだったのだ…。  それでも…諦めることはできなかった。儚い光を過去に戻し、新たな生命の樹を誕生させたのだった。 「…お目覚めですか?」 「…えっ?」  目覚めると水色の雲がフワフワと辺りを浮かんでいた。柔らかいその雲に手をついて起き上がると、可愛らしい目をしたピンク色の髪の毛をした女の子が立っていた。 「…私は…ノルン……。貴方をここに呼んだものです…」 「……なんだ…ここ……。…夢でも見てるのか?」 「……」 「あれ…よく見たらこの空間…さっきのゲームに……」 「ごほん…! 私は…ノルン……。貴方をここに呼んだものです…」 「…一体…何が……」  現状を整理していると、目の前の子は髪の毛を揺らして近寄り、僕の頬を少しつねって離した。僕はつねられた頬に手を当てて、その子の目を見た。 「…いてっ…!」 「……もう一度言います。私は貴方をここに呼んだものです!」 「……へぇ〜…」 「……」  ノルンという女の子は僕がきちんとした返答するまで、無言で顔をつねっていた。まあ…そのおかげで、僕はスマホゲームの異世界に来てしまった事を実感していたのだが…。 「…わっ、わかったから…つねらないでよ……」 「…わかってくれて何よりです……。ところで…貴方の名前を教えてくれますか?」 「…ユイトだけど……」 「…ユイトさんですね……。覚えておきましょう…」 「……僕をこの世界に呼んだわりには名前も知らないんだね…」  僕は呆れながらそう言うと、その子はピンク色のアホ毛を揺らしながらアタフタしていた。 「そっ、そのへんも含めて後で説明しますが…」 「ふ〜ん…」 「ユイトさん…実は貴方にお願いがあるんです…」 「…お願い?」 「…はい……」 「……」 「……この世界を壊してほしいんです」  
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