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ゆびきり
今日も夏美ちゃんは居なかった。風の噂で何処かに引越しをすると聞いた。しかし4日前に学校から帰って遊んだ時、そんな話は聞かなかった。誘いに行くと、いつもは出てこないおばさんが玄関の横の出窓から急に顔を出し声をかけてきた。
「いつも仲良くしてくれて、遊びにきてくれてありがとう。」
恥ずかしさのあまりいつも下を向いていたせいで顔をハッキリと見たことが無かったが、バッチリと目が合ってしまった。驚いて物陰に隠れそうになる。胸の鼓動を必死に抑えながら玄関の前で待っていると、夏美ちゃんが出てきた。
「ごめんね。お母さん変な事を言いそうだったから。さあ!遊ぼ。今日は何して遊ぶ? 」
変なことってなんだろう?
目の前の夏美ちゃんを見るが、いつもと変わらず元気に蝶を追いかけ回していた。夕暮れになり、いつもの指切りをした。
「また明日も遊ぼうね! 約束ね。指切ったら針千本飲ーーます。」
次の日、お昼ご飯を食べ出掛けても良い時間が早く来る事を願いながら時計を眺めていた。時間になるや否や、虫とり網とカゴを持ち急ぎ足で遊びに出かけた。しかし、夏美ちゃんの家はいつもより静まり返っていた。
何が違うか厳格にはわからないが、何かが違っていた。いくら呼び鈴を押しても誰も出てこなかった。
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