しずかな家

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しずかな家

夏休みも終わり、慌ただしくなってきた。それでも学校が終わるとすぐ家に帰り、ランドセルを投げ出して毎日毎日出かけた。 呼び鈴を押してもしーんと静まり返っていた。庭先に置いてあったタンスも、いつのまにか無くなっていた。ふと気付くと玄関の横にある出窓に掛かっていたカーテンが無い事に気付いた。何だか悲しくなって何度も何度も呼び鈴を押しながら叫んだ。 「夏美ちゃん!いるなら返事して!」 泣きそうになりながら押していると、珍しく人が通りかかった。 「そこのお家。引っ越したよ。急だったから…… 」 、驚きと悲しさの気持ちが入り交じり、走ってその場を離れた。いつもなら帰るとすぐ祖母にお菓子をねだるのだが、そんな気分にならなかった。ぼんやりとしている私をみて 「今まで遊べて良かったね。楽しかったね。またきっと会えるよ…… 」 その言葉を聞き、こらえていた涙が溢れてくるのがわかった。祖母はずっと頭をなでてくれた。
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