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夏の日
いつの頃か、1人で遊ぶことが多くなっていた。近所には同じ年頃の子供達は居たが今みたいに携帯など無く、誘いに行っても留守ならば1人で遊ぶしかなかった。家にはいつも母と祖母がいた。母はいつも忙しそうに動きまわっていた。話を聞いて欲しくて顔を見上げながらまとわりつくが
「後でね」
と言い残し、構ってくれなかった。
祖母もまた忙しく動きまわっていたが、話をよく聞いてくれた。いつものように学校であったことや担任の先生の事を話していると、来客があった。玄関から祖母の部屋は近く、そっと聞き耳を立てていた。どうやら近所の人が回覧板を持って来たようで、しばらく話し込んでいた。
退屈になった私は母に遊びに行く事を伝え挨拶もせずお客さんの横を早々と通り過ぎようとした。その様子を見て
「挨拶は?」と、厳しくいうのだった。
祖母とお客さんを交互に見ながら精一杯の声で挨拶をした。恥ずかしがり屋の性分の私を知っている祖母は笑顔で、よく頑張ったとばかりに頷きながら
「あまり遠くに行っちゃいけんよ。暗くなる前にかえりなさいよ」
そう言って笑顔で手を振ってくれるのだった。
鼓動がどくんどくんと私の中でいっぱいになった。
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