【短編】注文の多いラブレター

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小腹も空いているし、せっかくだから食事もしていくことにした。カフェならサンドイッチとかパンケーキが主流だろうか。だけど、このマスターからパンケーキが出てくるとは想像し難い。食事のメニューに視線を落とすと、思いもよらない品が書かれていた。 『……ナシゴレン…』 なぜ?店内はオリエンタルな雰囲気でもない。どちらかというと、モダンなイメージだ。 「ナシゴレン上手いよ。これね、コイツがインドネシアに三年間住んでて覚えた味だから、本格的。食べてみて、おすすめ」 カウンターの男性客が私の方を向き、熱弁してくれた。どうやらマスターとは友達のようだ。そう言われれば、頼まない訳にはいかないだろう。 お礼を言い、ナシゴレンとアイスコーヒーを注文した。 「本当に美味しいから。あとね、その下に書いてあるカレーも最高。あとね、こだわりの手ごねハンバーグ。これ絶品」 止まらない解説に、思わず笑ってしまった。 『すごく詳しいですね。常連さんですか?』 「常連ていうかー」 「腐れ縁なんです」 マスターがナシゴレンを持ってやってきた。 『腐れ縁…』 「えぇ、もう長い付き合いになります」 コトンと目の前に置かれたお皿から、スパイスの特有の香りが漂ってきた。胃が音を立てて動き出す。スプーンで掬ってひと口。これまで食べた中で断トツ一位の味だった。 『美味しい!鼻に抜けるスパイスの香りも全然違いますね』 マスターは嬉しそうに笑っていた。私はひと口ひと口味わいながらペロリと平らげる。 『インドネシアって、留学とかですか?』 「いえ、前職の関係で」 どこかの商社の駐在だろうか。
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