(30)詩:エステル瑠璃 さま

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お兄ちゃんが 出撃して まもなく 戦争が 終わった 時代は 変わった あっけなく 変わった むなしかった お兄ちゃん お兄ちゃん 空を 見上げて 心の中で叫んだ 僕は 新制の中学生に なった 英語の先生は 元海軍将校だ お兄ちゃんのことを 話すと 先生は 涙を流された お兄様は 立派です そう言って 涙を流された 特攻なんて 馬鹿馬鹿しい そう言う人たちが いる中で 先生は 泣いていた 時が 流れた 僕は お兄ちゃんと同じ 東京大学の 法学部に 入学した 司法試験に 合格して 弁護士になった 可愛い 人と 巡り合って 結婚した 平和な時代を 生きてきた あの 戦争は 間違っていた 確かに 間違っていた お兄ちゃんたちは 無駄死になのか? 大学生のとき 教授が ぽろりと言った 日本が 今 平和なのは わだつみ の お蔭だと 思っています あの時 僕は 泣いた 隠れて泣いた 僕だけでは なかった いつも なぜか 僕のとなりに座る 学生も 泣いていた あなたは 知らないかも知れない 僕の兄は あなたの お兄様と  同じ部隊に いたのです 僕たちは 抱き合って泣いた お兄ちゃん お兄ちゃん お兄ちゃん ありがとう お兄ちゃんは やっぱり 僕の自慢の お兄ちゃん いつまでも いつまでも 僕の自慢の お兄ちゃんなんだ 『見知らぬ恋人』 https://estar.jp/novels/25809804
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