(30)詩:エステル瑠璃 さま

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「言えなかった言葉」 (詩集『見知らぬ恋人』より) あなたが  召集されたとき どうしても 言えなかった言葉がある ==行かないで== 言っても 無駄だった 万歳 万歳と言われて 英雄の ように 扱われた 誰だって 死にたくないのに あなたと私は 恋人どうし あなたは 泣きごとは 言わなかった 本当は 泣きたかったでしょう? ==行かないで== ひとこと 言いたかったのに あなたは 英霊と なって 帰ってきた むなしく 空を 見上げるだけ あなたが 英霊となって 帰ってきたのに 日本は 戦争に 負けた どうにもならない 権力に 人々は屈したのに 苦しめないで もう 苦しめないで また 北の方で 戦争? あれだけ 苦しめられたのに いちばん苦しむのは 名もなき 人々です 名もなき 兵士たちです いちばん 苦しむのは 愛する人を 亡くした 人々です 今でも ==行かないで== そう言いたい人が いる筈です 本当は ==死なないで== 心の底から 言いたいのは この言葉です
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