(30)詩:エステル瑠璃 さま

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「向日葵」(詩集『見知らぬ恋人』より) あの頃、私は、女学生で あなたは、大学生。 戦争が、始まって、あなたに、召集令状が来た。 学徒出陣。 私は、泣いて、泣いて、あなたと、愛し合った。 明日が、ないかのように、愛し合った。 あなたは、飛行機乗り。 嫌だ。嫌だ。あなたが死ぬなんて。 どんなに叫んでも、どんなに祈っても 変わりは、ない。 ” 私、待っている。いつまでも。いつまでも ” あなたに告げると、悲しそうな顔を、するだけ。 東京に、火が廻って 私は、少し田舎の方に、逃げた。 あなたは、鹿児島の知覧にいた。 そして、戦争が終わった。 向日葵の、元気がなくなる頃 あなたは、帰って来た。私の所に。 ” 僕は、死ねなかった。仲間と同じように 役に立ちたかった ” そう言って、一人部屋に、閉じ込むばかり。 何も食べずに。 ある夜、私は、あなたの、お布団の中に、入った。 ” 生きるということは、愛し合うことよ ” あなたは、泣いた。泣いて、泣いて、泣いて、泣いた。 私たちは、泣きながら、愛し合った。 それから、少しずつ、あなたは、元気になった。 仕事も、はじめて、もっと元気になった。 私たちは、愛し合う。 あなたが、戦争に行く前のように。 赤ちゃんが、できた時 あなたも、私も、喜びに包まれた。 ” 僕は、生きて、幸せになる。仲間の分も ” あなたは、生きている。 私も、生きている。 手を取り合うだけで、幸せだと思える、幸せ。 今日も、生きる。 明日も、生きる。 愛し合って、生きる。 あなたと、、、。
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