Spanish Blue

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 アパートの窓からは、みなとみらいの観覧車「コスモクロック21」が小さく見える。あの写真を撮った頃に完成していたのだと思うと、自分自身の年齢を自覚せずにはいられない。恐らくあの頃、既に大学生になるかならないかの年齢だったと思う。写真に写った私と親友とはとても仲がよくて、いつも二人で遊びに行ったものだった。小学生の高学年で転校してきた私の親友になってくれた彼女。Kさん。  私たちは今だって親友だ。私はそう思っている。年をとっても変わらない緩いつきあいができる。つきあい始めて何年になるのだろう。40年くらいは経つ気がする。正確には、だいたい37年か。今年も彼女から年賀状がきた。忙しくてこちらから出すことはできず、まだメールもしていない。返事をしておかねばと、内心で舌を出した。  彼女はもう何年も、女性のパートナーと暮らしている。LGBTとか、同性パートナーシップとか、そんな言葉が出てくるよりも前からだ。彼女は「職場の女の子と暮らし始めたの」と言っていたが、私は特にパートナー関係だとは思わず、単なる友達同士のルームシェアかなと考えていた。数年後に何となく「ああ、パートナーだったのか」と感じ取ったことを覚えている。同時に大きなショックを受けた。  私の初恋の人は、Kさんだったからだ。私は女性だけれど、女性を愛する人だからだ。男性のことも、愛することができる。  Kさんのことが好きであることに気づいたのは、中学も終わりのことだったと思う。私たちはいつも仲よしだった。一度も同じクラスにはならなかったが、休み時間には廊下でお喋りしていた。交換日記もしていたし、同じアーティストを好きになり、一緒にライブへ行き、進路が分かれて高校生になっても大学生になっても、ずっと緩やかにつきあい続けていた。こんなおばさんになっても、まだ親友だ。私はずっと、彼女に恋をしていた。ほんのりとした、ほのかな、かわいらしい少女の恋心だった。
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