変わるとき

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 花奈の記憶力に驚きつつも、急ぎアプリで検索をかけると絶版、そして中古はどれもプレミア価格になっていた。 「先生ならお持ちになってるよ、きっと」  そう慰められても、まさかご本人にお借りするわけにもいかない……。 「ねぇ、その薔薇って何本あるの」  衣智華の言葉に、私は本数を数え始めた。全部で二十四本。バレンタインの時にもらったのと同じ本数だ。  それを告げると衣智華はスマートフォンの画面を見つめ、検索結果を熟読して言った。 「やっぱり告白かもよ」 「なになに?」 「薔薇二十四本の意味は「一日中あなたを思ってます」だって」 「えー!!」  花奈が素っ頓狂な声をあげると同時に、興奮した口調で捲し立て始めた。 「さっきのね、短編! 薔薇の囁きも二十四本だった! 女学生にプレゼントした薔薇の花束の本数!」 「え!? マジで!!」 「女学生が何も知らずに受け取るから、息子が説明するのよ! 僕の気持ちはこの二十四本で表現してるって」 「ひゃー!」  いつもは冷静な茉麻が素っ頓狂な声をあげる。私も頭の中がパニックだ。 「そういえば、バレンタインでいただいた花束も二十四本だった……」 「マジか! それもう確定じゃない!?」 「バレンタインに薔薇の花束もらったなんて聞いてないけど! 綾音、そう言うのはちゃんと報告しなさいよ!」 「ただの偶然だよ。たまたまだと思う」  こう言うのを深読みしてはいけない。案外、何の気無しに送った本数だったりするのだから。 「わかんないよ〜、わざとかもだし」 「そうだよ、先生オトナの男だもの。こういう演出とか好きそう!」  散々みんなに冷やかされ、どうしたらいいのか。次に先生に会うのはいつ!? と食い気味に花奈に聞かれ、事務所に引っ越す日だと答えると、必ず確認してこいと三人から鼻息荒く申し渡されてしまった。
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