3人が本棚に入れています
本棚に追加
ロコノミシリノ①
『ガチャ』
「いってきまーす」
颯爽と玄関から足を踏み出し、朗らかな陽気の外へと足を踏み出す。
今日も爽やかな朝だ。
日差しがまぶし……――
「くわないな~」
玄関前には大きな影が差している。
見上げると、見下すように直立する高層ビルが今日も日差しを遮っていた。
「もう、ホント、朝が台無しだよ……」
足元の影にため息を吐き捨てて歩き出す。
最近駅前ずっと工事してるなーって思ってたら、これですからね。
いくつかマンションやオフィスビルは建ったけど、さらにドーンとドデカイのきたからね。
ノアールノイッシュヒルズ、通称ノノヒル。
ノノヒルは1階から5階は商業施設、上の階は、40階くらいあるのかな、詳しくは忘れちゃったけど、住居になっている。
どんなセレブーさんが住んでるのやら、私とはきっと住む世界が違うんでしょう。
地元的にはこんな田舎にもなんかもの珍しいものが建つのかーって、盛り上がったけど、いざ建ってみたら、ねぇ。
「まぁ、買い物には困らないけど、っね、っと」
意味もなく横断歩道の白線の上だけを渡ってみる。
ただ、横を見ると、寂しそうなシャッター街が見えるのは心苦しくはある。
ノノヒルの商業施設には大型スーパーも入ってるからこの辺の地域の人はほとんどそっちに流れてしまっていた。
もちろん私のような学生は特に商業施設に目の色変えて浮足立ったさ。
「ふむぅ、ゲーセンには行ってるからそれで許してほしい」
誰になく許しを請うけど、歩みは止めない。
それくらいの気持ち。
それっぽっちの罪悪感。
だから、誰も何も言わない。
この変化を戸惑いはするけど、受け入れてる。
「おはよー、どこいくのー?」
「おっとっと、考え事してたら行き過ぎた!おはよ」
あっはっはっは、とクラスメイトと笑い合う。
回れ右して校門に向かった。
行きたくないとかそんなことないよ、本当だよ。
最初のコメントを投稿しよう!