ロコノミシリノ①

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「はぁ……つまんない」 「あのさ、人の前でそんな景気の悪そうなため息つかないでくれます?」 「あ、いたんだ」 「いたさ……!ゴホッ、ケホッ」 ゲームセンターの店員のマスク男の……。 「えっと、名前なんだっけ?」 「不躾になんですかね。名札に書いてあるでしょ、ほら、藍澤って」 「あ、藍澤さん!お久しぶりです!」 「うん、昨日も会ってますね。自己紹介も月イチ位でしてるね、ゴホッ」 「ノリ悪いなー、藍澤さん」 「いや、だいぶ付き合ってあげてる方だと思いますけど」 店員用のカウンターテーブルに肘ついた手に顎を乗せて店内に視線を戻す。 私はその横の壁に寄りかかって同じように店内を眺めている。 「また、先生に怒られたんですか?」 「ノーコメントで」 「つまり、イエスと」 「NOコメントで」 「ちょっと発音良くしても意味ないですよ」 「面白いことないかな~」 「僕の友人がこんなこと言ってましたよ。面白いことは探すものじゃなく、見つけるものだって」 「何が違うの?」 「さぁてね、僕には理解できませんでした」 何じゃそりゃ、探すと見つけるって同じことだと思うんだけど。 探す……見つける……search……find……? う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん…………。 「私にも分かんない」 「ですよねぇ」 二人してなんとなく天井を見つめた。 「ねぇ、ちょっと店員さん」 「あ、はい、何でしょうか」 眼の前で声がして、視線を戻すと 「わ、美人……!」 「ん?うん、知ってる。それより店員さん。あのUFOキャッチャー取れないんだけど」 こちらに一瞥だけして、藍澤さんの方にまたすぐ向き直る。 うーん、クール。 「え、あ、あぁ、はいはい。どちらでしょうか」 藍澤さんが付いていくあとを更に付いていくド〇クエ歩きをする。 じっとしてても暇だからね。 「これ」 見た目は今どきのJKだけど、どこか品のある美人の彼女が、指差すUFOキャッチャーには、とあるアニメのマスコット的キャラのクッションが2本のバーの上に乗っていた。 「これは……すみません、これで一番取れやすくなってるんですよ」 そう!しかも店としても出したいから、だいぶゆるくなってるやつ。 「うそよ!もう5千円やってるのに落ちないのよ」 「それただの下手なんじゃ――」 「っ!」 思いっきり睨まれた。 あぁ、でも美少女は睨んでもキレイだなー、ドキドキしちゃう、というかしてる。 「う~ん、どうしたものですかね……」 そうだ、良いこと思いついたっ。 「ふんふんふーん」 鼻歌をわざとらしく歌いながらお金を投入する。 「あ、ちょっと!」 女の子が止めようとしたけど、軽快な音楽が鳴り始める。 「んまっ、見ててよ」 バチコーン、と負けじと今どきのJKっぽくウインクをかましてみる。 「ふん、どうせ取れるわけがないわ」 髪を掻き上げてそっぽを向かれてしまう。 ふむぅ、振られちった。 「んじゃ、よろしくおねがいしますね」 「あいよー」 私の返事に藍澤さんは片手を上げて、その場をあとにする。 「あ、ちょ、ちょっと!」 美少女は藍澤さんの背中に声を投げかけるが、ひらひらとひょろい手を振り返されるだけだった。 「まぁ、これで元気だしなよ」 ポフっと今しがた取れたのをプレゼントする。 「え?」 「ふふーん」 「え?……えっ?」 「ぶいっ」 「…………あ、ありがと」 消え入りそうな声だからちょっと意地悪してみる。 「ん~?なぁに?」 耳を近づける。 あ、良い匂い。さすが美少女。 「ありがたく受け取っておくわ。それじゃ」 「あっ――……」 クッションをギュッと抱きしめて去っていってしまった。 「ふむぅ、友達になりたかったのに」 あの制服、電車で数駅隣のお嬢様学校のだったような。私には入れそうもない。 ま、しょうがないっか。私もかーえろっと。 「あ、そだ」 藍澤さんのもとへ戻る。 「ねぇねぇ、あの子よく来る?」 「う~ん…………」 藍澤さんは視線を上の方に向けてマスクを軽く引っ張って離す。 これは考えたりする時の藍澤さんの癖。 「……いや、今日初めて見ましたね」 「そっか!ありがと。じゃね~」 「はい、お気をつけて。ゴホッ」
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