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ゲームセンターを出ると、世界はオレンジと黒に分けられていた。
そんな中に彼女は夕陽に目を細めてシャッター街となっている商店街を見つめている。
「う~ん、絵になりますな~」
タイトル、夕焼けと美少女……いや、荒廃した世界に咲いた花、これ優勝じゃない?
良いアングルを探して、スマホを翳しながらそっと近づいてみる。
傍から見れば怪しい人、というか実際そっと避けられてるのは気にしないでおく。
「なにか用?」
「ぎくっ」
視線はこちらに向けずに話しかけられた。
「いや~、美少女見かけたらほっとけないというか」
「はぁ……どこのおじさんよ」
「げへへ、おじょうちゃん、おじちゃんとイイコトしようか」
「ねぇ」
私のボケを一掃するように肩にかかっていた髪を払ってこちらを向く。
ん~どこのシャンプーかな……。
雰囲気ガン無視で思考は加速する。
「あなた、面白いわね」
「ん?ありがとう……?」
そんなにおじさんギャグ良かったのかな。
「あなたはあなた自身に嘘ついてて、面白い」
「…………?」
何を言ってるんだろう。
「ふ~~ん、無自覚……ねっ。ありがとう、面白い話が浮かびそう」
フフ、と笑って私に背を向けて去ろうとする。
「あ、ちょ、ちょっと」
「何?」
「わ、私と付き合ってください……!」
呼び止めようと必死過ぎて訳わからないこと言って頭を下げている。
いや、何やってるんだ自分……!?
「…………は?」
顔が上げられないけど、ドン引きしてる顔が目に浮かぶ……!
私だったら逃げてる。間違いなく、今のうちにって。
「何?1人では買いにくいものでもあるの?」
お、そっちに解釈してくれるミラクル……!
「友達いなそうだもんね」
「友達くらいいるもんっ」
だが、続く言葉に突っ込むために顔を上げる。
「上っ面だけのね」
「んぐっ」
私の心にクリティカルヒット。私は撃沈した。
だけど、そんな綺麗な笑顔を浮かべて言われるのもたまらない……!
「別に良いわよ」
「えっ?」
「その代わり」
「その代わり……?」
もしかして身売りしろとか、金とか要求されたり……!
「あなたのこと観察させて」
「観察?」
「そう」
なに、視姦プレイ?そういう趣味の方なの?
「それじゃ、楽しみにしてるから――って、あなたの連絡先、というか名前すら知らない」
「まぁ、そうだねー」
まさかの超展開だから。
「私は美野こころ」
「私、神林璃乃。りのっちって呼んでね。こころん」
「私のことはせめてこころって呼びなさい、神林」
「えー…………」
先制パンチにカウンターで返されてしまった。
しかもジョルトカウンター。
ジョルトってなんだっけ?
なんか漫画で読んだような……まぁ、いいや。
そして、連絡先とチャットアプリのIDを交換してその日は別れた。
「ふ~んふふ、ふ~ん♪」
お風呂を済ませてベッドに潜り込む。
今日は素敵な出会いもあったし、良い夢見れそう。
だけど、その前に。
「今日は更新されてるかな~」
お気に入りのWeb小説作家さんのロコノミ氏のページを見る。
「お、あったあった」
新着作品があったことによって今日はさらに良い1日になった。
「ん?アイコンが変わってる」
ロコノミ氏のアイコンがなんか見たことあるような気がするのに変わっていた。
どこで見たんだっけ?
「ふむぅ……むむむ」
ま、いっか!
「読もう読もう」
布団に背中を預けて読み耽ることにした。
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