3 物思う心

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── 不安ごと全て任せてくれないか。  元夫、健人との関係もそんな始まり。  大学卒業して暫くは東京で働くという慶に合わせるよう決めた、地元を離れての就職だった。その卒業時に慶と別れ、それから分かった妊娠。希望が叶ったはずの外資系コングロマリットのファッショングループでの入社研修、そして望んでいたブランドでのプレス業務。けれどこの妊娠をいつまでも隠せるものでもなく、不安に押し潰されそうになっていた。そんななか最終面接で厳しい質問を投げかけてきた、気難しげな風貌の男性、健人に声を掛けられた。最初は頑なだった私も、さりげない彼の配慮に次第に打ち解けていった。面接の時は年甲斐もなく気になって、思わず厳しい質問をしてしまったんだよと後になって聞かされた。    ひと回り近く年上だった夫は、祖父が北欧の人だそうで肌や瞳の色素が少し薄くそれが若々しく見えていた。整った風貌ながら鋭い目元とスチールフレームの眼鏡が神経質そうな印象を与える人だった。事実少し細かいところはあり職場の女性陣からは煙たがられていた。それが却って私には良くて、女性の気配の無い彼の側は安心していられる、はずだった…… 「シオ、体調はどう?極力歩かんで済むとこにするからな」  大和に心配かけないように、隙を見計らい聞いてくれる。そして今日も大和との遊びに付き合ってくれていた。 「そうそう、大和の学校はいつからなん?」 「入学式があるから少し先で来週の月曜日なの。たいていのところは今週末から始業式で学校始まるみたいだけど」 「じゃあ平日の何処か(どっか)で休み取るからシオの都合良い日教えといて。病院と母子手帳貰いに行っとこ。その間は大和みとくし」 「そこまでは大丈夫だよ。話も聞いてもらって落ち着いたから」  気にしないでと笑顔で返したけれど、さっきまでの甘い表情を引き締めた慶が吐露した。 「先々約束取り付けとかんと、今シオ実家暮らしやろ?俺、シオの両親の印象最悪やからな。会わせてもらえるか不安しかないわ」  まさかこの一週間が、今までの人生を再構築させることになるだなんて……  
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