1 八年目の春

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   アトラクションを目一杯遊んだ大和は夕食を食べながらもう既にうつらうつらし出していた。  魔法世界の映画に出てくるレストラン。薄暗い雰囲気ある照明に、所々ある仕掛けや猪のような人形等が子供には怖かったようだけれど、暫くすると眠気との戦いになり、私の膝の上で抱きつくように寝落ちてしまった。 「シオ、良かったら代わらせて」  隣の椅子へ移動してきた慶が、大和に腕を伸ばす。 「そんな、大丈夫なのに」  いいからいいからと私の肩に手を置き、大和をそっと抱き上げた。 「シオは大和の世話で全然食べてへんし」  と寝顔の大和を眺めながらおでこの髪を横に撫で付けながら優しく笑う。  横並びの椅子は肘がつく程の距離で、けれどこのふと静まった二人の間には八年分の距離が確かに横たわっていた。  気まずい沈黙に、自然と目につくもので話を濁す。 「腕しんどくない?ソファー席聞いてみようか?」 「いや、寧ろ嬉しいな。こうやってこの子抱かせてもらえるとは思ってんかった」    と大和の頬を指先で突つきながら打ち明けてくれた。 「……慶は、いつ子供のこと知ったの?」  大和に触れる手を止めた慶が、ゆっくりと私に向き直る。 「会えたら謝りたい思っとった。本当に申し訳なかった。すまない。許してくれなんて都合良いこと言わんから、何か困ったことあるなら手助けだけでもさせて欲しい」  大和を横抱きにしながら、周囲に違和感無い程度に頭を下げる慶。 「そんな、私こそ話し合いもせずに逃げるようにして、ごめんなさい。……過去だもの。せっかくもう一度会えたことだし、お互い過去はもう流そう」  慶からの返事が無かったので、重ねて告げた。 「今日会えてよかった──  けれど途中で言葉は遮られた。 「シオ」  膝の上で握りしめる私の両手にそっと包むように重ねられた大きな手を私は知ってる。 「シオ。お互いフリーでもう一度会えたのに、何が問題?」  
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