ゆめやさん

1/1
前へ
/74ページ
次へ

ゆめやさん

ed21f6f6-c911-4cec-8115-7dda09e1beaa 音楽家の移民の女の子。 夕暮れどきの街角で あるお店と出会います。 すてきな絨毯が 敷いてあるだけの がらんどうとしたそこには 売りものらしきものは ひとつもありません。 女の子は不思議そうに見ていると おじいさんがやってきます。 「やあやあ、お嬢さん。よくきたね。」 おじいさんに誘われるまま、女の子はお店に入ります。どうぞと促され、靴を脱いで、すてきな絨毯の上に座りました。 「ここはお店なの?」 「そうさ。ここが僕のお店だ。」 「何もないのに?!」 「そう。きみには何にもないように見えているようだけれど、僕の売りものはこの店のありとあらゆる場所に詰まってる。」 女の子は困った顔をして訊ねます。 「ここでは、何を売っているの?」 「ゆめだよ。」 「ゆめ?!」 「誰もが眠る時に見るそのゆめが、僕の売り物なんだ。」 絵を描いていた時に そんな話をなんとなく思いついて。 一見何もないように見えて、豊かさがそこにある、という、ものの見方が広がっていくようなお話が好きです。 心穏やかに、 やさしいゆめが見られますように。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加