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ゆめやさん
音楽家の移民の女の子。
夕暮れどきの街角で
あるお店と出会います。
すてきな絨毯が
敷いてあるだけの
がらんどうとしたそこには
売りものらしきものは
ひとつもありません。
女の子は不思議そうに見ていると
おじいさんがやってきます。
「やあやあ、お嬢さん。よくきたね。」
おじいさんに誘われるまま、女の子はお店に入ります。どうぞと促され、靴を脱いで、すてきな絨毯の上に座りました。
「ここはお店なの?」
「そうさ。ここが僕のお店だ。」
「何もないのに?!」
「そう。きみには何にもないように見えているようだけれど、僕の売りものはこの店のありとあらゆる場所に詰まってる。」
女の子は困った顔をして訊ねます。
「ここでは、何を売っているの?」
「ゆめだよ。」
「ゆめ?!」
「誰もが眠る時に見るそのゆめが、僕の売り物なんだ。」
絵を描いていた時に
そんな話をなんとなく思いついて。
一見何もないように見えて、豊かさがそこにある、という、ものの見方が広がっていくようなお話が好きです。
心穏やかに、
やさしいゆめが見られますように。
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