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「もしかして、婚約のお話が出たからお嬢様は先日わたしに、その……告白をしてくれたのでしょうか……」
聞きづらそうに確認すると、レイラの顔を覗き込むようにしてエレーナは答える。
「そうだ、と言ったらあなたはお返事をきちんとくれるのかしら?」
「それは……」
だとしたら、なおのこと返事なんてできるわけがない。すでに婚約が決まっているエレーナからの告白を受け入れてしまうなんて、それこそジェミナリー家に仕えるメイドとして大問題である。
「ねえ、レイラ。前も言ったけどね、別に断ってくれたらそれで良いのよ。わたしはそうしたら諦めて政略結婚だって受け入れられるわ」
どうせ結ばれない恋なのだから、レイラが嘘でも良いからきっぱりと振ってしまえばいいだけの話なのに。
「申し訳ございません。お嬢様……。わたしは何も答えられないです……」
その答えを聞いて、エレーナは諦めたように大きなため息をついた。
「まったく……。でも、わたしがこの家にいる間に答えは頂戴ね」
それだけ言って、エレーナがもうこれ以上の話はよしてほしいとばかりにレイラに背を向けて、机の上の本に手を取った。
これ以上はレイラも何も言えず、部屋からでざるを得なかった。
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