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「エレーナお嬢様……」
「あら、レイラ。今日は随分早く来てくれたのね!」
レイラがエレーナと会う時間を早めてくれたと勘違いしたのか、エレーナが嬉しそうな声をあげた。
だけどレイラはそんなエレーナの反応にも気にしている余裕はなく、いきなり本題を話し出した。
「あの、お嬢様。お嬢様が婚約するというお話は本当なのでしょうか?……」
その言葉を聞いて、エレーナも状況を理解して、真面目な顔になる。
「もうレイラの耳にも届いてしまったのね……。ええ、そうよ。わたしは16歳の誕生日が来たら結婚してこの家から出て行かなければならないの」
「そんな……」
突然の出来事にレイラは訳が分からなくなり、エレーナの顔を直視できなくなってしまう。
「あら、レイラ。そんな悲しそうな顔しないでよ? わたしみたいにお家に迷惑かけ続けてきた子が名門貴族のお家に嫁がせてもらえるのよ? 喜んでくれないと困るわ」
エレーナが困ったように笑っている。そうなのだ、レイラは本当ならエレーナの言う通り、しっかりと喜ばなければならない立場にあるのだ。それなのに、やっぱりレイラは心の底から喜ぶことなんてとてもできそうになかった。
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