何気ない日常

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何気ない日常

いつもと変わらない時間。いつもと変わらない道順。いつもと変わらない風景。いつもすれ違う人。 人は行動を繰り返し習慣化する。そして、経験により体がその行動を覚える。特に時間に余裕の無い時はこの習慣がものを言う。頭の冴えない日も体が勝手に反応してくれるのだ。 僕はいつも7時過ぎのバスに乗り、通勤快速と各駅停車の電車を乗り継ぎ、徒歩も含めて1時間半かけて会社へ出勤する。 いつもの通勤電車は、最短時間で会社へ到着できるものの、人混みで景色を見る余裕などない。視線を動かすことも体を動かすこともままならず、限られた空間に自分だけの世界を作る。 その空間は、本や携帯端末から新しい情報をインプットする事はできるもの、目で見た体験としてはほとんど変わり映えしない。 先日、僕は急に人混みが嫌になり、各駅停車に乗り座って通勤をする事を選んだ。 ゆったりとした空間。心地よい温度。心なしか乗車してる人がみんな穏やかに見えた。 そして、ゆっくりと電車が走り出す。通勤快速も各駅停車も同じ時間を刻んでるのに、こうも違うものか。 いつもと同じ道を走ってるのに、窓からの景色が鮮明に見えた。青い空、白い雲。レトロな街並み。しばらくすると遠くに富士山が見えた。自分が乗っている電車から富士山が見えるなんて思いもしなかった。 今まで自分は何を見ていたのだろう。下を向いてただ時間に追われてやり過ごして。身近な手の届くところにこんなにも素敵な物があったのに。 それから僕は時間の使い方を考え、自分の目でしっかり流さずに見ていこうと思った。 そして、君が見ている景色がどんなものなのか、僕にも教えて欲しい。そう思えるようになった。
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