第四部 私もあなたが好きだった

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「詳しいな、何かで調べたことがあるのか?」 「ううん。そこに書いてあったよ」  アニェスが指差す先には、展示の目の前の案内用の電子プレートがあった。 「カンニングかよ」 「ズルくないもんね」  笑うアニェスに呆れながら、俺たちは本館の一階に向かった。  一階ではまさに水族館と言わんばかりの展示、つまり大きな水槽があって数多くの魚たちが泳いでいた。  他にはクラゲの展示があり、それは中々に幻想的である。  アニェスはクラゲの展示を気に入ったようで、紫色のライトに照らされて輝くクラゲたちを見つめていた。  俺も彼女の横に並んで、ぼんやりとクラゲを眺める。なんとなく現実味というものを曖昧にさせる空間だった。 「綺麗だね……」 「ああ」  アニェスはそれだけ言って、水槽を眺め続けていた。 「でも、この子たちも、私と一緒」 「一緒って?」 「ずっとここにいなくちゃいけない。自由に海を泳ぎまわることはできないの」 「でもアニェスは今、自由だろう?」  そう返すと、アニェスは少しだけ哀しそうな顔をした。 「自由にも色々ある。自分が自由だと思っていても、そうじゃない時だってあるよ。きっと、私じゃわからないんだ」 「アニェス?」  なんだか気になることを言ったので尋ねてみるが、アニェスは儚げな笑顔を浮かべたまま、 「そろそろ行こっか。隣にプラネタリウム、あるんでしょ?」 「あ、ああ」  なんとなく不安を感じながらも、俺は頷くしかなかった。
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