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「詳しいな、何かで調べたことがあるのか?」
「ううん。そこに書いてあったよ」
アニェスが指差す先には、展示の目の前の案内用の電子プレートがあった。
「カンニングかよ」
「ズルくないもんね」
笑うアニェスに呆れながら、俺たちは本館の一階に向かった。
一階ではまさに水族館と言わんばかりの展示、つまり大きな水槽があって数多くの魚たちが泳いでいた。
他にはクラゲの展示があり、それは中々に幻想的である。
アニェスはクラゲの展示を気に入ったようで、紫色のライトに照らされて輝くクラゲたちを見つめていた。
俺も彼女の横に並んで、ぼんやりとクラゲを眺める。なんとなく現実味というものを曖昧にさせる空間だった。
「綺麗だね……」
「ああ」
アニェスはそれだけ言って、水槽を眺め続けていた。
「でも、この子たちも、私と一緒」
「一緒って?」
「ずっとここにいなくちゃいけない。自由に海を泳ぎまわることはできないの」
「でもアニェスは今、自由だろう?」
そう返すと、アニェスは少しだけ哀しそうな顔をした。
「自由にも色々ある。自分が自由だと思っていても、そうじゃない時だってあるよ。きっと、私じゃわからないんだ」
「アニェス?」
なんだか気になることを言ったので尋ねてみるが、アニェスは儚げな笑顔を浮かべたまま、
「そろそろ行こっか。隣にプラネタリウム、あるんでしょ?」
「あ、ああ」
なんとなく不安を感じながらも、俺は頷くしかなかった。
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