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その後、俺たちはサンシャインシティを見て回った。
数多くの店が配置されていて、ここを巡るだけでもかなりの時間遊ぶことができた。
アニェスは基本的にウィンドウショッピングをしていて、何か買ってやろうかと思ったが、彼女は全て遠慮してしまった。まぁ俺が生活費の殆どを支払っているからだろうが、彼女も家の手伝い(主に家事全般)を行ってくれているのだから、あまり遠慮する必要はないのだが。
サンシャインシティを見て回った後は、普通に池袋を散策した。その頃には俺の腹が減っていたので、軽く食事を摂った。アニェスは食事を摂る必要がないので、俺の食事はとても簡易なものだった。アニェスはまたも申し訳なさそうな顔をしていたが、彼女を座らせて一人食事を摂るというのも可哀そうだ。人間とアンドロイド(元人間、と言った方が良いか)では色々と違うから仕方ない。
取り敢えず街を散策していると、俺はカラオケ店を発見する。そう言えば俺はアニェスと再会した後、彼女の歌を一度も聞いていない。カラオケに入れば、アニェスは歌ってくれるだろう。
「なぁアニェス。カラオケ行かないか?」
隣のアニェスに尋ねてみるが、彼女はどこか辛そうな表情を浮かべた。
「ごめんね。私、歌えないの」
意外な返事だった。
「歌えないって?」
「この身体には調律機能が付いていなくって、歌を歌うことはできないの。せっかく誘ってくれたのに、ごめんね」
非常に申し訳なさそうにそう言ってくるアニェス。
「いや、良いんだ――。そうか、歌えないのか」
「うん。本当は歌いたいんだけど、どうしてもね。音程がおかしくなっちゃうから」
五年前、歌を歌ってくれたアニェス。彼女の歌が、俺はとても好きだった。
少し残念な気もするが、強要しても仕方ない。
「まぁ、ルミにでも頼めば、もしかしたら歌えるようになるかもな」
あいつは祝福者(ギフテッド)だから、ちょっと無茶な要求でも叶えてくれそうな気がしなくもない。
「あはは。今度聞いてみるね」
アニェスはそう言って微笑んだ。
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