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そうして、俺たちは池袋を遊びつくした。
ゲームセンターに行ってぬいぐるみを取ったり、映画館に行って映画を観たり。そんな風にして過ごしている内に、もう日が暮れかかってしまった。
俺とアニェスはちょっとした広場に来ていて、なんとなく遊び疲れて石でできた椅子に腰かけている。お互いに言葉はなく、それでも満ち足りた時間だった。
五年前の約束。葛西臨海公園で遊ぶという約束。
それを場所は違えど、しっかりと五年後でも果たすことができた。俺はその事実だけで、もう満足だった。
西の方を見ると、太陽がもう沈みかかっている。流石に遅くまで遊ぶ気はなかったので、そろそろ帰るつもりだ。しかし、その前にアニェスに伝えなければならないことがある。
それは、五年前に言えなかった、あの言葉を。君に好きだと、そう伝えたかった。
五年経っても、君が機械の身体になってしまっても、決して俺の気持ちは変わらなかった。歌が好きな少女に恋をしていた俺。過去に囚われて未来から目を背けていた自分。今というその束縛を、もう取り払わなければならない。
「なぁ。アニェス」
少し唐突だっただろうか。しかし俺はしっかりと言葉にしていた。
「どうしたの、ユウ?」
アニェスは俺の背中に寄りかかっていて、なんとなく密着した身体がこそばゆい。
「――アニェスが、生きてて良かった。どんな形であれ、君が生きていて、良かった」
「どうしたの、急に?」
少し気恥ずかしいが、それでも俺は言葉を紡いだ。
「五年間、アニェスを探していた。公には死んだことになってたけど、それはきっと違うって思って、ずっと戦ってた。少しズルい言い方になっちゃうけど、それでも君に会いたかったんだ」
アニェスは無言で俺の言葉を聞いていた。その沈黙が、今は心地良い。
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