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「まるで生きた心地がしないな」
自分を鼓舞するように軽口を叩いて、俺はパラシュートの装備を外す作業に入る。
『取り敢えずバレてないみたいだね。アニェスさんを取り返した後は、ピックアップに来てくれるんだっけ?』
「ああ。もう一度屋上に戻ってきて、回収に来たヴィヴィさんにラぺリングで持ち上げてもらうつもりだ」
アニェスと取り返した頃にはもう作戦も殆ど終了しかけているので、機銃しか積んでいない回収ヘリでも近づけるとの算段だ。結果的にどうなるかはわからないが、もしピックアップが困難な場合は、単独で技術研究本部から脱出する必要がある。
俺はパラシュートの装備を外し終わって、それらを屋上の床に投げ捨てる。
「良し、行くぞ」
今回の作戦はスピード勝負だ。下手に隠れて時間を浪費するよりは、強行突破を多用して素早く任務を達成するべきである。
だから俺は屋上の出入り口の施錠を見て、問答無用でシグを抜き去る。そのまま固定されている部分に発砲を行い、ロックを破壊した。今は外で戦闘が行われているので、銃声をそこまで気に掛ける必要はない。
破壊したドアを開いて、俺はすぐに建物内部に潜入した。
「ロジィ。建物の地図はあるか?」
『うん。シェパーズの諜報班から技術研究本部の内部構造図は貰っているよ。今リンクさせるね』
どうやらシェパーズは防衛省にも間諜を潜ませていたらしく、彼らと協力することによって俺たちはこれまで以上のパフォーマンスを出すことができていた。
『この前潜入した時の名残か、施設のネットワークが厳重になったみたいで、ハッキングでアシストはできないから注意して!』
「ああ、わかってる」
俺は屋上から階段を下りながら、とにかく六階を目指した。
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