第五部 愛してるを歌にして

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 どうやら俺が侵入したのは、この前の潜入ルートとは反対だったらしい。少しコンピューターなどの機材配置が異なるが、基本的にはこの前と大差ない。いつ戦闘用アンドロイドと接敵しても良いようにグリズリーマグナムを構えながら進むが、今のところ動きというものはなかった。  慎重にコンピュータールームを進んでいくと、この前戦闘用アンドロイドと遭遇した部屋への扉を発見する。  扉はどうやら修復されているようで、前と同じ船室のドアのようだった。  俺はゆっくりとドアに近づいていき、耳をそばだてる。流石に音は聞こえなかったが、油断はできない。 『気を付けてね』  ルミの声に頷き返し、俺はドアのレバーを捻った。  重苦しい開錠音が響いて、ドアは段々と開いていく。  隙間から中を覗き込んでみるが、あの戦闘用アンドロイドは一体も配置されていなかった。恐らく地上の戦闘に投入されているのだろう。まぁ交戦状態にならないだけマシか。  俺は少し安堵して溜息を吐き、身体をドアの間に滑り込ませて、アンドロイドが安置されていた部屋に侵入した。  ドアを閉じて、俺は正面を見据える。前はここでアンドロイドと戦闘になり、その結果アニェスに助けられる結果となったため、この先へは行ったことがない。  ルミがコンタクトのHUDに示す地図からして、アニェスの本体はこの先に存在しているようだ。  俺はいつ奇襲を受けても良いように警戒しながら歩いて、空になったショーケースを観察しながら進んでいく。既に奥の方にまた大扉があることはわかっているので、取り敢えずそこまで行く必要がある。 『何か、静かだね』  ルミの言葉に、俺も同じ感想を抱いていた。 「いくら何でも、ここまで警備が手薄なことってあるのか?」 『多分表に出払っているんだろうけど、確かに変だね。まるで――誘い込んでるみたい』  俺は無言のまま歩いて、すぐに大扉の前まで到着する。取り敢えず大扉を検めてみるが、これも爆薬で吹き飛ばせそうだった。  しかし下手に規模の大きい爆発を起こしてしまうと、アニェスの本体が近場にあった場合、傷つけてしまうかもしれない。  そのことをルミに伝えてみるが、 『大丈夫だと思うよ。流石に厳重に保管されているだろうし。むしろあたしたちでアニェスさんを持ち出せるかの方が心配だよ』  ルミの言葉に安心して、俺は先ほど使った爆薬をもう一度持ち出す。そしてそれを大扉に貼り付けて、背後に下がる。
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